トラ / Tiger

2003/1/21公開

トラ

トラ

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作品情報

解説

 私が初めてコンプレックス系の模様折り作品に出会ったのは、日本折紙協会主催の「第9回世界の折紙展」(1993年8月)に出品されたモントロールさんの「Raccoon(アライグマ)」だと思うのですが、その高い技術力にとても驚くと共に、手法の面白さに引きつけられました。

 実際に模様折りをやってみたのは一年ほど後になってからでしたが、なかなか自然な感じの造形にならずに苦労しました。余計な線が目立ったり紙の重なりが不均等になったりと、かなり無理(無茶?)をしながらも「アライグマ」「オカピ」などを折ることが出来て、この技法の面白さを改めて感じたものです。

 さて、この「トラ」、原型ができた経緯をよく憶えていません。自然に紙を折り畳んでいる内にできあがったような‥‥。ただ、基本的な発想の中にモントロールさんの「Dog Base」に代表される動物の足を折り出す独特の技法の影響があったのは確かです(影響も何も「まんま」とも)。

 形になった最初の「トラ」には12本の縞を折り出すことが出来て、これは川畑さんの「しまうま」より多い!などと一人悦に入っていました。価値観が完全に「縞の本数>全体の造形」という‥‥。その気持ちもよーく分かりますが(笑)。

 作り直す気になってから2年半をかけて(といっても思い出しては取り組む、といった感じでしたが)完成に至りました。改良の途中段階でいろいろとあがいた物が、『をる』14号に掲載されています。

 改良の課題としてまずあったのは、全体の造形をリアルなものにすることで、これを解決するのに、頭と尻尾のカドを取り替えるという荒技(?)を使いました。結果、自然な雰囲気になった体型に「ああ、この基本形はこうなりたかったんだ」と思ったものです。

 最後まで悩んだ難題は頭部の造形でした。「トラの顔」といえば西川誠司さんの作品を意識せざるを得ません。なんとか「西川トラ」の雰囲気とは異なるものをと思っていましたが、顔を細かく折り出す前の構造が西川トラのそれと全く同じ形で、どう折ればよいのか悩みました。

 しかし逆に、必ず折れるはずだという確信を持てたことはとても心強く、基本的な方法論を踏襲しつつ、とにかく徹底的に「見立て」の瞬間を探し求めて折りまくりました。口を閉じたところ、というのはトラに対して持っているイメージを託したものでもありますが、実は口を大きく開けた西川トラと変えたかったという理由もあります。「目」の折り出しが決まった時には、これだ!という手応えがありました。

 そうしてやっとこのトラは作者の手から放たれていったのでした。

 他にこの作品のポイントを挙げるなら、最初から意図したものではないのですが、縞の折り出す向きを揃えて出した「毛並み」は余り類例のない表現だと思っています。逆に気に入らないのは尻尾で、これはちょっと当たり前すぎますね。といって他にやりようも無いのですが。

 2002年の折り図では、尻尾の折り出し方などを一部97年版と変えています。上の写真はそのどちらでもなく、ぐらい折りで縞の数を増やしてます。